かつての渋谷川周辺の変遷をしのぶ散歩ルートは、渋谷駅をスタートに、近未来的なスポットから縄文〜弥生時代の住まい跡、そして静かな神社までを巡るコースです。
現在では地下を流れる渋谷川は、かつて地上を悠々と流れ、地域の農業や生活を支える貴重な水源として重要な役割を果たしていました。また、その周辺には商業活動が栄え、多くの人々が集う場所でもありました。そんな渋谷川の歴史や記憶が、現代の街並みにどのように息づいているのかをたどることが、この散歩コースの醍醐味です。
日常の慌ただしさを忘れ、渋谷の“いま”と“むかし”を一度に味わう散歩に出かけてみませんか?
今日のルート かつての渋谷川周辺の変遷をしのぶ散歩ルート
A.渋谷駅
B.渋谷ストリーム
C.猿楽古代住居跡公園
D.金王八幡宮
E.渋谷氷川神社
F.宮益御嶽神社
渋谷川周辺を巡る散歩スタート
A.渋谷駅

今回は東京メトロ銀座線・渋谷駅東口をスタート地点に選びました。
地下1階に新設された東口改札を抜けると、目の前には再開発の息吹を感じさせるバスターミナルと渋谷ストリームへの案内サインが並びます。ここから、かつての渋谷川の面影をたどる散歩が始まります。

B.渋谷ストリーム
渋谷駅東口を出てすぐ目に飛び込んでくるのが、2018年にオープンした複合施設「渋谷ストリーム」です。

ガラス張りの吹き抜けアトリウムには、元の高架線を想起させるスチールの梁が配され、足元にはさりげなく“川の流れ”をイメージしたライティングが施されています。天井から射し込む自然光と、夜のライティングが織りなすコントラストも美しく、都会のオアシスのような空間です。

ガラス張りの吹き抜け空間に面した 稲荷橋広場 です。ここはかつて渋谷川に架かっていた「稲荷橋」の名を冠したオープンスペースで、木製ベンチやプランターが配された都会の“縁側”のような場所。屋根越しに差し込む自然光を浴びながら、通り抜ける風やカフェの香りを感じられます。定期的にマーケットやライブイベントも開催されるので、訪れるタイミングによっては地元アーティストのパフォーマンスに出会えるかもしれません。

渋谷ストリーム
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷三丁目21番3号
公式サイトはこちらから
稲荷橋広場を抜けたら、左手の小道へ。そこが 渋谷リバーストリート です。


渋谷リバーストリート は、隠れた渋谷川の流路をモチーフにした全長約200mの遊歩道です。足元には川底を思わせる青いタイルが敷かれ、ポイントごとに設置された石やベンチが「川岸」の雰囲気を演出しています。ところどころに配された解説パネルでは、かつての川幅や水位を立体的に感じられます。

ゆったりとした石畳を歩きながら、渋谷川の記憶をたどるこのリバーストリートは、次のスポット猿楽古代住居跡公園へと自然につながっています。渋谷ストリームから歩いて約15分、川沿いの風景を楽しみつつ、古代の暮らしに思いを馳せる場所へ向かいましょう。
C.猿楽古代住居跡公園
現代の街並みを抜けると、突然現れる緑のオアシス、そこが 猿楽古代住居跡公園 です。

ここでは、縄文〜弥生時代に人々が暮らした「柱穴(はしらあな)」の遺構が、都市のど真ん中で大切に保存・公開されています。
2014年の発掘調査後、そのままの遺構を現地保存し、緑あふれる公園として整備されています。


猿楽古代住居跡公園
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町12−5
次は、渋谷川の流れを守り続けてきた古社・金王八幡宮へと足を進めましょう。
D.金王八幡宮
猿楽古代住居跡公園からさらに北西へ歩くこと約10分。

渋谷の喧騒を少し離れた一角に鎮座するのが 金王八幡宮(こんのうはちまんぐう) です。
創建は鎌倉時代ともいわれ、源頼朝から厚く信仰された伝承を持つ古社。渋谷氏の氏神として代々崇敬を集め、江戸時代以降も街の守り神として人々の尊崇を受けてきました。

一歩境内に足を踏み入れると、渋谷の喧騒からは想像もつかないほどの静けさが広がり、凛とした風格が漂います。
鮮やかな彩色を今に伝える拝殿の彫刻は、江戸初期の宮大工の技が息づく逸品です。

渋谷金王八幡宮
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3丁目5−12
公式サイトはこちらから
次の目的地は、水の神を祀る渋谷氷川神社です。
E.渋谷氷川神社
猿楽古代住居跡公園や金王八幡宮で歴史を感じた後、渋谷氷川神社で渋谷川を見守り続けた神聖な雰囲気に触れてみましょう。
金王八幡宮から表参道を渡り、徒歩約8分で到着します。

金王八幡宮の華やかな装飾とは対照的に、渋谷氷川神社は飾り気を抑えた重厚感が魅力です。

太い梁と柱が支える深い軒の下には、苔むした屋根瓦と素朴な木組みが歴史の重みをしっかりと刻み、飾り気を抑えながらも堂々たる重厚感を醸し出しています。参道を覆うケヤキの大木が、都会の喧騒を忘れさせる静寂へと誘い、地下に眠る渋谷川の記憶をそっと呼び覚ましてくれます。

本殿裏手の小道を進むと、ひっそりと祀られた稲荷社や境内社が点在する。細い路地を散策する感覚で、隠れた御利益スポットを探してみましょう。


渋谷氷川神社
〒150-0011 東京都渋谷区東2-5-6
公式サイトはこちらから
次はいよいよコースの終点、宮益御嶽神社へと向かいます。渋谷の“いま”と“むかし”をつなぐ最後のひと歩きをお楽しみください。
F.宮益御嶽神社
渋谷氷川神社から更に南へ進み、緩やかな坂を上がった先に現れるのが 宮益御嶽神社(みやますみたけじんじゃ)。

明治期に開かれた比較的新しい神社ですが、渋谷の再開発に伴い高台へ移転したことで、街を見下ろすようなどっしりとした佇まいを見せています。高台に鎮座するため、拝殿へと続く石段が印象的。階段を一歩一歩上りながら、渋谷の谷風を感じてください。

通常の手水舎とは異なり、手水盤が鏡のように磨かれた鏡手水は珍しく、姿を映しながら静かに心を整えられます。しかし、コロナ禍では飛沫防止のため使用が一時禁止されており、現在も再開しているかどうかは未確認です。静かに手を合わせ、自分の姿を映しながら心を整えられるひとときが戻る日を願いましょう。

また、拝殿前に並ぶこの一対の狛犬は一般的な狛犬とは一線を画す“日本狼(ニホンオオカミ)”をモチーフにした珍品です。

宮益御嶽神社
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1丁目12−2
公式サイトはこちらから
拝殿前の小さな舞台からは、渋谷の街並みが一望できます。
かつての川筋をたどるように、ビルの谷間を流れる道路や線路を見下ろすことができます。

これにて「かつての渋谷川周辺の変遷をしのぶルート」は完了です。
渋谷の“いま”と“むかし”を一度に味わえたでしょうか?次はぜひ、このコースに組み込まれた周辺スポットやカフェで散歩の余韻に浸ってみてください。
また時間に余裕があれば、散策を締めくくるプランとして渋谷スクランブルスクエアの展望台「SHIBUYA SKY」に登って、かつての渋谷川の流路を眼下に見下ろすのもおすすめです。
かつての渋谷川周辺の変遷をしのぶルート
A.渋谷駅
↓60m(1分)
B.渋谷ストリーム
渋谷リバーストリート
↓950m
C.猿楽古代住居跡公園
↓950m
D.金王八幡宮
↓600m
E.渋谷氷川神社
↓1300m
F.宮益御嶽神社
↓130m
G.渋谷駅