田園調布散歩 今日のぶらり散歩は田園調布、多摩川界隈
日本有数の高級住宅地として知られる東京都大田区の田園調布は、東京湾へと続く多摩川が育んだ武蔵野台地に位置しています。広大な敷地に広がる邸宅や上品な住宅街と、多摩川の美しい流れや季節ごとに移り変わる緑豊かな美しい景観が特徴の田園調布を散歩します。
田園調布散歩 今日のコース
A.(スタート)東急東横線目黒線 「田園調布駅」
B.159本の銀杏並木「田園調布」
C.自然林をそのまま活かした「宝来公園」
D.一軒家のイタリアンレストラン「田園調布倶楽部」
E.東京名湧水「田園調布せせらぎ公園」
F.多摩川八景に選定されている「多摩川台公園」
G.(ゴール)東急東横線目黒線多摩川線 多摩川駅
田園調布散歩 の前に田園調布の歴史を少し
古代から明治時代までの農村
田園調布周辺には4世紀から6世紀に複数の古墳が築かれていることから、この地域は古代から農耕社会が存在し、多摩川の水資源と広い平野を活用して生産性の高い農業が行われ、首長による統治が行われていたと考えられています。明治時代は、この地域は交通の不便な農村地帯であったようです。
大正時代 新しい街づくりの始まり
田園調布の街づくりは、関東大震災後に始まりました。1918年(大正7年)、渋沢栄一らによって設立された田園都市株式会社(現在の東急電鉄の前身)は、「田園都市」という理想的な住宅地を開発することを目指し、洗足、大岡山、多摩川台地区(現在の田園調布)の開発に着手しました。
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渋沢栄一の目指した田園都市とは
田園都市とは、イギリスの都市計画家エベネザー・ハワードが19世紀末に提唱した概念に基づいています。田園都市論は、都市労働者が健全な生活を送るために、都市と田園の利点を兼ね備えた理想的な都市の理論です。渋沢らはこの考え方に影響を受け、日本独自の田園都市開発を目指し、田園調布を出発点としました。当時の欧米の都市デザインを取り入れ、放射状に広がる並木道が特徴的です。
鉄道と街の一体開発
1923年(大正12年)から分譲が開始され、田園調布は、田園ユートピアを実現するための最も理想的な住宅地の開発と言われました。同年に駅も開業し、1926年(大正15年)には調布駅から田園調布駅へと改称されました。田園調布の新鮮な町のデザインと、鉄道整備の一体的な開発により、「田園都市多摩川台」は都心へのアクセスもよく評判となりました。
街のイメージを守るための厳しい取り決め
田園調布では街のイメージを維持するために厳格な取り決めがあります。建築基準法に加えて、「建築協定」と呼ばれるものが存在します。これは住民が自主的に定める基準で、建物の形状や用途に関する規則を設け、相互に守り合い監視し合うことで良好な住環境を長期間維持するための制度です。たとえば、「田園調布憲章」として知られる基準があり、他の迷惑となる建物の建設を禁止し、敷地の分割を制限し、公害や迷惑を防止するなどの取り決めがあります。
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1980年代 テニスの街
多摩川園は1925年(大正14年)に「温泉遊園地 多摩川園」として開業しましたが、1979年(昭和54年)に閉園しました。その後、多摩川園ラケットクラブとしてテニスクラブの運営が行われました。1980年代には田園調布には「多摩ラケ」と「田園テニス倶楽部」、隣接する「田園コロシアム」などがあり、テニスブームによりとても賑やかでした。多摩ラケは2002年(平成14年)に、「田園コロシアム」も1989年(平成元年)に閉鎖され、跡地は現在はマンションとなっています。田園テニス倶楽部は現在もクレーコートを維持しています。また、多摩ラケの一部は湧水と緑に囲まれた「田園調布せせらぎ公園」として整備され、2008年4月にオープンしました。
現在も続く取り決め
現在も田園調布地区では、大田区が「田園調布憲章」と「環境保全についての申し合わせ」に基づいて「田園調布地区地区計画」を施行しています。敷地の最小面積や建物の高さ、緑化の要件などが定められています。これにより、街のイメージを維持しています。
今の田園調布
直面する問題点とこれからの田園調布
これらの規制が逆に不動産の売却を困難にし、近年では空き家や空き地が増加し、かつての理想とされた街並みの一部が崩れつつあります。また、高齢化や相続による土地価格の上昇も問題となっています。一方で、多摩川駅周辺の「田園調布せせらぎ公園」や「多摩川台公園」の整備が進んでおり、今後の発展が期待されています。
田園調布の歴史は古代から始まり、大正時代には田園都市の理念に基づいた街づくりが行われました。その後、テニスの街として賑わいを見せましたが、現在は取り決めと課題を抱えながらも街の魅力を保っています。これからの田園調布の発展がますます期待されます。
では、田園調布の基礎知識と歴史を振り返ったところでぶらり散歩のスタートです。
田園調布散歩 スタート!
A.田園調布散歩 スタート地点:東急東横線目黒線 田園調布駅
東横線と目黒線が乗り入れている 田園調布 駅は、渋谷駅まで急行電車で12分と、都心へのアクセスが抜群です
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田園調布 駅舎は、一度は駅の地中化に伴い解体されましたが、2000年に駅のシンボルとして、大正12年(1923年)の開設時の姿を復元しました。噴水を中心にした西口ロータリー、そこから広がる放射状および同心円状の道路、街路樹の銀杏並木は旧駅舎と合わせて広く知られており、 田園調布 の街のランドマークです。
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B.銀杏並木の美しさを楽しむ:159本の銀杏並木 田園調布
田園調布 の住宅は1923年に分譲が始まり、放射状に広がる3本のエトワール型の道路を造り、それぞれ200メートルほどにわたり159本の銀杏の大樹が街路樹として植えられています。
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旧駅舎と合わせて 田園調布 のランドマークとして広く知られている絵になる街路樹は、春夏秋冬どの季節も美しく、四季の移り変わりを楽しむことができます。
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C.自然林をそのまま活かした:宝来公園
田園調布 駅よりイチョウの並木道を歩いて6分のところに宝来公園があります。
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斜面にある自然林をそのまま活かした、約70種1,500本の樹木が生い茂り、春には紅白の梅や桜、初夏には新緑と藤、秋には椎の実、冬には椿と、季節ごとに木々の表情が楽しめます。
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5月に咲く300株ほどの黄菖蒲も美しく、湧き水のある池ではカルガモや甲羅干しするカメ、鯉の姿を目にすることもできます。
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D.一軒家のイタリアンレストラン :田園調布倶楽部
宝来公園より多摩川駅に向かって歩くと美しい街並みに溶け込むようにして佇む一軒家のイタリアンレストラン田園調布倶楽部があります。ここでピザやパスタを食しながら一休み。
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E.大田区の新しい名所:せせらぎ公園 せせらぎ館
多摩川駅の東口駅前にはある田園調布せせらぎ公園を散歩します。
水と緑に囲まれた自然豊かな場所に、高低差のある地形を活かした公園と隈研吾さんのデザインによるスペースがオープンしました。かつては多摩川園遊園地として賑わい、その後多摩ラケットクラブがあった土地の一部を大田区が取得し、整備して開園しました。2023年5月現在、まだ工事が続いています。東京名湧水57選の湧水と緑に囲まれた豊かな公園です。
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せせらぎ館
せせらぎ館は隈研吾さんが設計しました。隈さんは新国立競技場の設計でも知られています。多摩川園駅と崖線の間には、隈さんらしい木をふんだんに使った長方形のスペースがあります。南北に細長い敷地にはカフェ、休憩スペース、図書貸出スペース、集会室、多目的室などの部屋が並び、崖線と向かい合うように120mほどの縁側もあります。
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2階の集会室や多目的室はガラス張りで、どの部屋からでも崖線の緑を楽しむことができます。館内の利用は大田区民または大田区に通勤している人に限られます。休憩スペースでは多くの学生が自習やグループ学習を行っている様子が見受けられます。
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せせらぎ公園
多摩川円駅側は低く、田園調布側は高い台地になっており、その間には長い崖線が延びています。この崖線から湧水があり、大きな湧水池ではさまざまな水生生物が生息しています。田園調布側の崖線部分は鬱蒼とした森になっており、春にはサクラやヤエザクラ、秋にはイロハモミジの紅葉を楽しむことができます。多摩川園側のせせらぎ館の周辺には多目的広場があり、子供たちがビニールシートや小さなテントを使って1日中遊びまわっています。
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園内には大きな湧水池が2ケ所あり、水生生物が生息しています。また、春にはサクラ、秋にはイロハモミジの紅葉を楽しむことができます。
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せせらぎ公園・せせらぎ館は自然環境と建物が融合した施設です。公園内の崖線から湧き出る湧水と湧水池は豊かな生態系を育み、四季折々の風景や植物が訪れる人々を楽しませてくれます。また、せせらぎ館は隈研吾さんの設計により、木々と緑に包まれた空間を提供しています。カフェや図書貸出スペースなどの施設は、人々が集まり交流する場としていつも賑やかです。
F.自然と歴史が融合する多摩川八景: 多摩川台公園
多摩川八景に選定されている多摩川台公園は、川沿いの丘陵地である高台に750メートルにわたって広がり、周囲を一望できます。晴れた日には富士山や丹沢の山並みの景色も望めます。
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園内には、都内最大級の前方後円墳を含む亀甲山古墳や宝莱山古墳と、その間に多摩川台古墳群と呼ばれる8基の古墳があります。周辺の古墳と合わせて田園調布古墳群とも総称されます。亀甲山古墳は、4世紀後半~5世紀前半ごろに造られた前方後円墳で、国の史跡に指定されています。
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自然林の道、展望広場、水生植物園、四季の野草園、あじさい園、山野草のみち、広場など見所も豊富です。園内より1955年に建てられた田園調布協会の聖堂を眺めることもできます。
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G.散歩のゴール地点:東急東横線目黒線多摩川線 多摩川駅
田園調布せせらぎ公園と多摩川台公園の間にある多摩川駅に戻って、今日の散歩は終わりです。
田園調布のお屋敷に心が踊り、自然の緑と川のせせらぎで心を癒され、古墳で古の時代に思い馳せるルートでした。
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田園調布散歩 コースのおさらい
A.(スタート)東急東横線目黒線 「田園調布駅」
↓ 350m
B.田園調布の銀杏並木
↓ 72m
C.宝来公園
↓ 550m
D.田園調布倶楽部
↓ 300m
E.田園調布せせらぎ公園
↓ 120m
F.多摩川台公園
↓ 52m
G.(ゴール)東急東横線目黒線多摩川線 多摩川駅
合計1.4km(公園内の移動は含みません)