四季折々、風情豊かな景色が楽しめる京都は、古くから様々な物語の舞台となってきました。これを読んでいる人の中でも、物語に描かれた京都の風景を想像し、ソワソワしたことがある人も多いことでしょう。
今回散歩していくのは、そんな「物語」の舞台となった京都の寺社仏閣たちです。
世界各地から観光客が訪れ、少しばかり賑やかになりすぎてしまった京都ですが、物語を片手に各地を巡れば、いつもとは少し違う雰囲気が感じ取れるはずです。
それでは、さっそく歩いて行きましょう。
今日のルート 京都 物語の聖地を巡る散歩
A.(スタート)京都市バス 五条坂バス停
B.清水寺
C.高台寺
D.祇園エリア
E.八坂神社
F.京都市バス 祇園バス停
京都 物語の聖地を巡る散歩スタート
A.京都市バス 五条坂バス
散歩の始まりは京都の大通り、京都観光のメインとなる東大路通に位置する五条坂のバス停です。近くには観光地だけでなく、「東大谷」と呼ばれ、多くの参拝者が訪れる墓地・大谷祖廟などがあります。

五条坂のバス停を少し南に歩くと、左鋭角に曲がる道「五条坂」が見えてきます。今回はこの五条坂を、観光客と共に歩いて行きましょう。五条坂は人通りも車通りも多い道。気を付けて歩いてくださいね。
京都の焼き物と言えば「清水焼」です。清水焼はその名の通り、清水寺のほど近くで作られていました。そして、その中心となったのが五条坂です。
五条坂には現在でも焼き物を扱うお店が並んでいます。美しい陶磁器の数々を楽しみながら進んで行きましょう。


そのまま五条坂を進んで行くと、美しい石畳の道・清水坂へ突き当たります。清水坂の道端には多数のお店が立ち並んでおり、歩くだけでも楽しめます。観光客気分で食べ歩きをするのも楽しいですね。
そのまままっすぐ進んで行くと、赤い立派な山門が見えてきます。ここが、京都屈指の観光地・清水寺です。
B.川端康成『古都』に登場する清水寺
日本文学をたしなむ人であれば、一度は川端康成の小説を読んだことがあるでしょう。丹念で美しい描写の数々に、虜になった人もいるかもしれません。
また、川端康成は京都を愛した文人の一人でもありました。小説『古都』には、かつての、そして、どんどん遠のいていく美しい京都が描き出されています。
今回の散歩の最初の目的地である清水寺もまた、『古都』で描かれる京都の一つです。ここの舞台の上で、主人公・千重子は自分の重い秘密を打ち明けました。国内外で高い評価を得た本作とともに、清水寺を散策していきましょう。

清水寺は、坂道を登った先にある美しいお寺です。西暦778年の開創だと伝えられており、古都・京都の中でも長い歴史を持つ古刹の一つです。
ご本尊は「十一面千手観音」という、11の顔と42の手を持つ観音様です。慈悲深く、人々を助けてくれるということから、多くの人々に愛されながら、篤い信仰心を集め続けています。

清水寺に近づいてまず目に入るのは、その立派な赤い山門です。正式には仁王門といい、その色味から「赤門」とも呼ばれています。両脇には京都最大級とも言われる仁王像が安置されており、その鋭い眼光から、なんだかあらゆるものを見透かされてしまいそうです。
清水寺の境内は比較的広く、坂道の多いお寺です。ゆっくりと休みながら巡っていきましょう。


清水寺といえば、市内を一望できる「清水の舞台(本堂)」が有名です。清水の舞台の上で京都を眺め、物語の主人公気分を味わいましょう。また、本堂と同じ舞台を持つ奥の院も必見です。
また、清水寺には縁結びに利益がある地主神社や音羽の滝など、見どころがたくさんあります。良いご縁を結びたいなら、一緒に参拝していくのがおすすめです。
一通り清水寺を楽しんだら、次の目的地に進んで行きましょう。
もう一度清水寺の山門に戻り、清水坂をまっすぐ進んで行きましょう。しばらく歩くと右側に細い石畳の道が見えてきます。左右に京都らしい家が立ち並ぶこの道を、「三寧坂」と呼びます。

三寧坂には京都らしいお店が立ち並び、ちらちらと眺めながら歩いているだけで楽しめます。お蕎麦屋さんなどの飲食店も多いため、小腹が空いても安心ですよ。
しばらく歩くと、右手に細い道「二年坂」が見えてきます。この二年坂に入り進んでいくと、右手側に大きな鳥居が見える道に突き当たります。突き当たりには石段があり、ここから次の目的地「高台寺」へと入ることができます。
音羽山 清水寺
〒605-0862 京都市東山区清水1丁目294
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C.劇場版『きのう何食べた?』に登場する「高台寺」

そのテーマ故に手を出しにくい人も多いかもしれませんが、マンガ家のよしながふみさん作の『きのう何食べた?』は名作です。おいしい料理に、山あり谷ありながらも穏やかな日常を描いた、同性カップルのお話です。
また、本作を映像化したドラマ版も、原作へのリスペクトを感じられる素敵な作品でした。そして、高台寺はそんなドラマの劇場版に登場しています。
映画の中では、竹林の中をシロさんがケンジの手を引き歩きます。私たちも、2人の気持ちを考えながら高台寺を散策していきましょう。

高台寺は1606年に、豊臣秀吉の菩提(ぼだい)を弔うために、彼の正室である「ねね」によって建立されました。桜や紅葉が非常に有名で、先に挙げた竹林も合わせて、春から秋にかけてライトアップも行われています。
受付で料金を支払ったら、案内に従いながら拝観していきましょう。境内では、建立当時から変わらない姿の重要文化財のお堂「開山堂」を見ることができます。周囲の風景とマッチしたその姿を見ると、ねねと秀吉の人となりが何となく浮かんできます。

その後、美しい庭園や竹林を眺めながら高台寺を後にしましょう。参拝の終わりには、雲居庵で一休みをするのもおすすめです。ここでは、お抹茶と甘未を味わうことができます。
高台寺の西側へ出て「ねねの道」へ。ねねの道を少し南へ歩くと、右側にとても細い道があります。ここを石塀小路といい、とても京都らしさに溢れた小道です。次の目的地までは様々な道がありますが、今回はこの道を歩いて行きましょう。

石塀小路を道なりに歩いて行きます。周囲には立派な木造建築が立ち並び、モダンな美しさを感じられます。また、所々に立ち並ぶ料亭は立派なものばかりで、京都の歴史を感じられるでしょう。
しばらく歩くと、少し広い石畳の道・下河原通に突き当たります。この通りを右へ進んで行き、最初の交差点を左へ曲がります。すると、大通りの東大路通が見えてきます。
東大路通を超え、そのまままっすぐに進みます。道なりに歩いて行くと、花見小路通に突き当たります。
鷲峰山 高台寺
〒605-0825 京都府京都市東山区 高台寺下河原町526
公式サイトはこちらから
D.『舞妓さんちのまかないさん』で描かれる祇園の街を歩いて八坂神社へ
これまでの趣旨とは少し違うかもしれませんが、今度は特定の場所ではなく、京都の1つの地域を散歩していきましょう。その場所とは、「祇園」です。祇園は世界でも有名な花街で、国内外を問わず観光客が集まる場所です。

そんな祇園の花形といえば、独特ながらも美しいお化粧をして、華やかな着物を着込んだ舞妓さんです。そして、マンガ『舞妓さんちのまかないさん』では、丁寧に描き込まれた舞妓さんの日常を見ることができます。
主人公の少女・キヨが作る美味しそうな料理の数々、そして、キヨの親友・すみれ(百はな)が送る舞妓としての生活。それらを想像しながら祇園の街を歩いて行きましょう。

花見小路を北の方向へ。少し歩くと、右側に祇園甲部歌舞練場があります。この歌舞練場は、舞妓さんや芸妓さんが公演を行う場所であり、『舞妓さんちのまかないさん』でも描かれる都をどりが開催される場所でもあります。

また、祇園甲部歌舞練場に併設されたギオンコーナーでは、さまざまな伝統芸能をダイジェスト版として観賞できます。チケット料金がかかってしまいますが、一見の価値があります。
花見小路通の左右には料亭が並んでいます。なかなか入るのは難しいですが、見ているだけで京都らしい情緒を楽しめます。これらの中に、百はなも訪れたお店があるかもしれません。
ゆったりとした気持ちで、花見小路を歩いて行きましょう。美しい石畳の花見小路を抜けると、大通りである四条通に出ます。四条通を右に折れ、最後の目的地へ向かいます。

四条通は非常に賑やかで、様々なお店が立ち並ぶ繁華街です。昔ながらのお店や新しいおしゃれなお店を眺めつつ、四条通の突き当たりに見える赤い門に向かって進んで行きましょう。
そして、四条通の突き当たりにあるのが、最後の目的地、八坂神社です。
祇園甲部歌舞会
〒605-0074 京都府京都市東山区祇園町南側570−2
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E.平家物語の『八坂神社』

「祇園精舎の鐘の声。諸行無常の響きあり」。この言葉から始まる物語を聞いたことがある人は少なくないはずです。中には、趣味として読んだ人もいるかもしれません。
上記に挙げた言葉はご存じの通り、古典『平家物語』の冒頭です。鎌倉時代に成立したとされる本作は、平家が発展し没落していく様子を描き出しています。学校などで習う機会も多く、その耳に残る言葉の響きから、記憶に残っている人も多いことでしょう。
そんな『平家物語』は、八坂神社と深い関わりがあります。巻六に登場する「忠盛灯籠」が八坂神社にあるからです。恋愛を楽しみ、鬼を恐れた平安時代の人々に思いをはせながら、八坂神社にお参りしましょう。
八坂神社の歴史は長く、創建は656年までさかのぼります。全国にある八坂神社の総本社とも言われており、「八坂さん」や「祇園さん」と呼ばれながら、篤い信仰を集めています。

主祭神は素戔嗚尊。厄除けや商売繁盛にご利益があるとか。美しい朱色で彩られた境内は自由に見舞われますので、ゆっくり参拝していきましょう。

八坂神社の見どころは、なんといっても四季折々で変化する美しい景観です。春は桜が咲き乱れ、夏は新緑が目に爽やかです。そして、秋は真っ赤な紅葉が映え、冬は(見られる機会が限られますが)赤い楼門に積もる雪が別世界の美しさを誇ります。

また、7月には大きな祭りである祇園祭が行われます。1カ月間にわたり行われるこの祭りは、疫病避けのために始まったとされる八坂神社の祭礼です。この時期は人通りが非常に多くなるため、祇園祭に出かける際は注意してくださいね。
お参りする際には、本殿にも注目です。八坂神社は本殿と拝殿を1つの屋根で覆った「祇園造り」という建築様式で建てられています。これは、八坂神社以外で見ることができない珍しいものです。
八坂神社の景色を楽しみ、さまざまな末社にお参りをしたら、いよいよ散歩の終わりです。八坂神社を出て、最後のバス停に向かいましょう。
八坂神社
〒605-0073 京都府京都市東山区祇園町北側625
公式サイトはこちらから
F.京都市バス 祇園バス停
八坂神社を出て東大路通を渡り、右の方向へ。少し歩くと、左側に「よしもと ぎおん花月」があります。ここは吉本が運営する劇場で、様々なイベントやお笑いの公演が行われています。京都オリジナルの「祇園吉本新喜劇」もおすすめです。
散歩の最終地点である祇園バス停は、「よしもと ぎおん花月」の前にあります。
今回の散歩では、物語や歴史の世界に浸ってきました。この場所で頭を今の場所&時代に戻してから帰宅しましょう。
家に帰ったら、散歩を思い出しながら、もう一度今回取り上げた作品を読んでみてください。再度歩きたくなること請け合いです。

物語の聖地を巡る散歩のおさらい
※今回の散歩では、拝観料が必要な場所が含まれています
A.(スタート)京都市バス 五条坂バス停
↓ 750m
B.清水寺
↓ 650m
C.高台寺
↓ 900m(花見小路まで)
D.祇園エリア
↓ 220m(四条通に出てから)
E.八坂神社
↓ 250m
F.(ゴール)京都市バス 祇園バス停