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建築

「 ニコライ堂 」美しい鐘の音がいつの世も平和を祈る

JR御茶ノ水駅から坂を下り、神田駿河台のビル街にただずむのが、日本ハリストス正教会東京復活大聖堂、通称ニコライ堂です。この聖堂は薄緑色のドームが特徴で、周囲の建物とは一線を画す荘厳な雰囲気を醸し出しています。
ニコライ堂は日本正教会の総本山でもあり、信者たちの信仰の場として重要な存在です。堂内部には壁画やイコンが豊富に飾られ、正教会の美的伝統を感じさせる空間が広がっています。
今日は町のランドマーク的存在であるニコライ堂をご紹介します。

ニコライ堂 の歴史

多くの試練を乗り越えた祈りの聖堂

ニコライ堂 は、ロシアから函館へ司祭として来日したニコライ・カサートキン大主教によって、正教会の伝来拠点として建てられました。1884年に着工し、7年の歳月を経てロシアと日本人信徒の寄付金により1891年に完成し、日本ハリストス正教会の総本山となります。

正教会は東方正教会とも呼ばれ、キリスト教が誕生した中近東を中心にギリシャや東ヨーロッパ、ロシアへ広がりました。西ヨーロッパを中心に広がったローマ・カトリック教会とともにキリスト教の基となる最古の教会です。

1917年ロシア革命が起こり共産主義政権になると、ロシア正教会は弾圧の対象となり、日本の正教会も本国ロシアからの支援を絶たれてしまいました。

その後、1923年関東大震災で聖堂はドームが崩壊し、土台とれんが壁のみとなり、試練は続きます。ニコライ師の後継者・セルギイ府主教は信徒のために、礼拝を四国松山の聖堂で行い、1929年の復興再建を待ちます。復興した大聖堂は第二次世界大戦の空襲被害から難を逃れることができ、日曜学校や教会の活動をいち早く行いました。

1962年、国の重要文化財に指定されました。石造文化財の中では、最も古い建物です。

礼拝の行われる毎週日曜日の午前10時から10分程鐘が鳴らされ、現在も平和の祈りが捧げられています。

ニコライ堂

ニコライ堂

ニコライ堂

ニコライ堂 の見どころ

ニコライ堂の建物

ニコライ堂 の設計は、ロシア人建築家ミハイル・シチュールポフが原案を設計し、英国人建築家ジョサイア・コンドルが実施設計と工事監督を行いました。関東大震災後の修復設計には、大阪の中之島公会堂や東京の歌舞伎座を手掛けた岡田信一郎が携わりました。

入口には八端十字架があります。短い横ラインがイエスの罪状を、下の斜めのラインは足台を表しているといわれています。

最大の特徴は美しいドームのエメラルドグリーンと真っ白な壁のコントラストで、大聖堂の本堂と鐘楼の上に十字架が輝いています。尖端状鐘楼があるドームの高さは35mで、日本最大のビザンチン様式の建物です。

ニコライ堂

聖堂拝観

ニコライ堂では、信徒でない方でも拝観や礼拝の見学が可能です。信徒でない方は堂内の後方からの見学で、案内係の方が正教会についてレクチャーしてくれるので、キリスト教にまつわる知識がない方でも理解を深められます。

一般拝観できる範囲の場所には聖人の絵が描かれているイコンが置かれ、キャンドルに明かりが灯されています。正教会では立ったまま礼拝を行うため、長椅子がないことに驚くはずです。カトリックの聖歌やプロテスタントの賛美歌とは異なり、アカペラで歌われる聖歌にもご注目ください。女性の澄んだ歌声を聞いていると、身も心も浄化され清々しい気持ちになります。

ニコライ堂

ニコライ堂 Found Japanのおすすめポイント

イコンと山下りん

ニコライ堂 の内部には多くのイコンがあり、目を奪われます。

イコンは礼拝のための絵画で、キリストや聖母、聖人の像が描かれています。荘厳なイコン絵画は中世イタリア美術の影響を強く受け、10世紀にギリシャ正教を国教としたロシアで花開きました。現在では宗教的な意味合いを離れ、純粋に芸術として再評価されています。

日本人最初のイコン画家である山下りん(1857-1939)は正教会の女性信者でした。ロシアの女子修道院でイコン制作の技術を学び、1883年(明治16年)に帰国し、ニコライ堂落成に合わせてイコンを描きましたが、震災で消失しました。山下りんのイコンにはサインがなく、ただ一心に教えを守りながらイコン制作に生涯を捧げました。りんの描いた300点余りのイコンは、日本の正教会で今も静かに人々に安らぎをもたらしています。

イコンイメージ
イコンイメージ図です(ニコライ堂内部ではありません)

ニコライ堂の見学

祈りの場である聖堂の一般拝観ができます。希望者が10名未満の場合は予約なしで、拝観時間内に聖堂内を見学できます。堂内では、歴史ある建築美や宗教的な芸術作品を鑑賞しながら、静寂を守り、他の訪問者や信徒の方々に配慮して、特別な空間で心洗われる時間を過ごすことができます。祈りの場としての意味を深く感じながら、お静かにご見学ください。最新の情報は公式ホームページでご確認ください。

拝観料金:大人300円(中学生まで100円、小学生以無料)

一般拝観:2024年4月2日〜9月29日 13時〜16時
     2024年10月1日〜2025年3月30日13時〜15時半

*毎週月曜日はお休みです。

*夏期休業8月16日〜22日

ニコライ堂 へのアクセス

・東京復活大聖堂

・所在地:千代田区神田駿河台4-1

・最寄駅:JR中央線・総武線 御茶ノ水駅(聖橋口)徒歩2分、地下鉄(東京メトロ千代田線)新御茶ノ水駅(出口B1)徒歩2分

・公式サイト: http://nikolaido.org/

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